Expert Advice

アイスクライミングに挑戦

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 このページでは、アイスクライミングとは何か?どういったアクティビティか?何が必要か?等、アイスクライミングの概要を説明します。なお、このページでは、アイスクライミングの概要なので、詳細な装備、一般的なクライミングの装備(ハーネス、ロープ等)、リード技術、安全管理等の内容は記載していません。


アイスクライミングとは?

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  アイスクライミングとは、凍った滝(氷瀑、ひょうばく)をアイスアックスやクランポン(アイゼン)を使って登るスポーツ全般のことを言います。クライミングの分類でいうと、アルパインクライミング岩稜等をロープ等を使って登ること)の部類に含まれます。
 夏は水がちょろちょろ流れている沢やじゃーじゃー流れている沢が、冬には凍った滝となって沢の真ん中に氷瀑や氷柱が出来上がります。その凍った滝を、アイスアックス(かまみたいなピッケル)とクランポン(登山靴に後付けする金属のつめ)を使って、ロープで確保しながら登るスポーツです。年によって氷結状態が大きく異なりますが、11月下旬~4月までの期間限定(一部は5月程度まで可能)のスポーツです。
 氷瀑や氷柱の形状は、気温、降雪・積雪、雨等によって毎年変わり、当日の気温・風によって難易度も変わってきます。100m以上の高低差がある滝や、傾斜は緩いものの400m以上続くナメ滝もあり、地域・エリアによって氷瀑の形は様々です。これらの滝を登攀(とうはん:登ること)する楽しみもありますが、装備の選定、アプローチ、アイスクライミング、下山等全体を通して楽しめるポイントが多くあります。
 岩に設置されたアンカー(ボルト)や灌木を支点に岩を登るフリークライミングとは違い、アイススクリューで氷壁に支点構築して登っていきます。アイスアックスやクランポン等を使う点において、道具に頼らないフリークライミングとは異なります。
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氷瀑までのアプローチ

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 冬、気温が氷点下まで下がると、水が凍って氷になります。自然界では水は川や沢、谷に存在します。つまりアイスクライミングは、冬に川や沢で凍った水が氷瀑・氷柱になっている場所まで歩いて行かなければなりません。このアイスクライミングができるエリアまで歩くことをアプローチと言います。
 アプローチは、登山口の駐車場に車を停めて、アイスアックスや食事・水などの必要な装備を持って、歩いて移動します。通常、登山道や林道などの雪道を歩きますが、エリアによっては、凍った川床を歩いたり、深い雪をラッセルして進んだり、急な斜面を登下降する場合もあります。アプローチ中の傾斜が緩い氷瀑はクランポン(アイゼン)をはいてトコトコ登っていけますが、少し急になるとアイスアックスを使って登ったり、中間支点を構築してロープで安全を確保したりします。
 アプローチ後に大きな氷瀑が見えてきたら緊張も高まり、「あの氷瀑を登るのか~」という気持ちになってきます。アプローチの時間は通常10分~20分程度ですが、エリアによっては、90分程度かかる場所もあり、厳冬期の登山靴やアウターシェル、ダウン等の保温着等十分な雪山装備が必要となります。
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様々なアイスアックス

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 アイスクライミングで使うアイスアックスは、シャフトがベント(曲がり)し、長さが50cm程度のものを使います。長いアイスアックスを使うと、氷に打ち込む時に振る力がさらに必要となり、腕がパンプしやすくなります。最近は、リーシュ(手首につけるバンド)を付けず、より打ち込みやすく動きやすいリーシュレス(リーシュがない)のアイスクライミングのスタイルが主流になってきています。特にアイスクライミングのリードは、アイススクリューの設置やアイスアックスの持ち替え等、アイスアックスの使う手を限定するリーシュを付けるととても登りにくくなります。
 アイスアックスは、長さ、重さ、重心の位置、ヘッドの形状、シャフトの形状、ハンドル(持つところ)の太さなどによって、様々なタイプがあります。アイスクライミング初めての方は、アイスアックスのレンタルや人に借りたりして、様々なアックスを試してみることをおすすめします。アックスの振り方やささりかた、引き抜き方の感覚は、アックスごとにそこそこ異なるため、使用感がよりしっくりくるものや使いやすいものを選択すると良いでしょう。軽いタイプが人気が高いですが、硬い氷に跳ね返されることがあります。気温がマイナス15度程度になると、氷は非常に硬くなります。高い買い物なので慎重に。
 アイスアックスはやすりで研がないと使えません。が、まずは全く研がないコンディションで数日使ってみることをおすすめします。アイスアックスそのものが持つ特徴を把握するためです。しっかり研いだときの違いも認識でき、メンテナンスするいいきっかけになります。
 また、アイスアックスと同様に重要な装備としてクランポン(アイゼン)があります。クランポンは、ワンタッチでブーツに装着でき、前爪が縦爪になっているものが使いやすいです。縦爪は氷を壊しにくく、下半身の動きに自由度が出るため、より難しいアイスクライミング向けです。ただし、縦爪は氷との接地面が少ないため安定性が悪く感じます。横爪は氷を壊しやすいですが、設置面積が大きく安定性があり初心者にはおすすめです。よっぽどシビアな氷のコンディションでない限り、縦爪と横爪の差は出ません。アイスクライミングは「道具だ」、つまり高価な道具を購入すればうまくなるという都市伝説がありますが、あるいみ正しいのですがただの現実逃避です。まずは、しっかり基本の技術を磨きましょう。
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必要な装備は?

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 基本的には雪山装備に加えて、アイスクライミング用のアイスアックス、グローブ、ヘルメット、ハーネス、ロープなどを使用します。傾斜のある氷瀑を登っていくため、各装備の軽量化がより求められます。アイスアックスやクランポンを装着して登り、氷が壊れて自分やビレイヤーにあたることもあるので、ヘルメット、グローブ、サングラス(もしくはゴーグル)、バラクラバ、アウターシェルを必ず装着しましょう。割れた氷は鋭利な刃物のように鋭くなることがあり、鼻、耳、顔等にあたって怪我をすることもあります。
 アイスクライミングにおいて、アイスアックスとクランポン(アイゼン)は重要な装備の一つですが、グローブ、アウターシェルも重要です。
 グローブは、雪や氷があるので防水性・保温性のあるグローブを選択する方もいますが、私がおすすめするのは厚手のフリース1枚です。特にアイスクライミングのリードにおいて、カラビナ、アイススクリューの設置、ロープ操作を素早くこなすというのは、安全性にとってとても重要な要素です。分厚いグローブで操作を慣れることも重要ですが、しなやかな伸縮性のあるフリースの操作性の良さにはかなわないでしょう。寒い時には手の甲に小さいホッカイロを入れて血流を良くする対策も有効です。ただし、マイナス15度以下の厳冬期のアイスクライミングには寒すぎて不向きです。気温が緩むと濡れてきますが、マイナス5度~10度の気温であれば、表面についた氷や雪はさっと手で払い落とせるので、濡れないよう気を付けましょう。
 アウターシェルは軽く、伸縮性(ストレッチ性)のあるモデルを選択しましょう。以前は伸縮性のあるモデルは非常に高価でしたが、最近は様々なモデルで伸縮性のあるものが増えています。
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どうやって始めたらいいの?

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 アイスクライミングは、一人で始めようと思ってもなかなか始められるスポーツではありません。良き指導者、信頼できる仲間等と一緒に学び、切磋琢磨していくスポーツです。また、ロープを使うので、クライマー(登る人)とビレイヤ―(ロープで安全を確保する人)が必要なので、経験者でないと事故につながりかねません。
 まずは、ガイド山行、山岳会や当クラブのような講習会を実施しているところを利用して始めましょう。当クラブでは、必要な知識・技術が習得できるようにコースを設定し、皆様が独力(自立して)でアイスクライミングできるようなサポートを最重視してイベント運営しています。
 また、最近は人工氷瀑といって、シャワーの水を放水し、野外で凍らせて登る施設がいくつかできてきています(赤岳鉱泉や岩根山荘等)。こういった施設はアイスクライミングの体験や初心者の練習という意味で、とてもおすすめです。ただし、人工氷瀑の氷は、同じようなルートが何度も登られているので、氷が階段状になってたり、穴が開いていてアックスを引っかけたりでき、自然の氷とはじゃっかん様相が異なります。
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まずは基本の練習から

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 アイスクライミングの基本として、装備の選定、アイスアックスの振り方、クランポンの蹴り込み方、ロープを使った確保技術等があります。これらの技術を比較的安全な氷瀑で何度も練習することによって、うまくなっていきます。
 うまくなるということは、いくつか要素があります。クライミングの基礎ができているか、ロープワークがよどみないか、ルートファインディングが適切か、ムーブ解決力があるか、技術・フィジカルが習熟しているかがその要素となります。これらの要素をバランス良く伸ばしていくことが、効率的にうまくなることができます。
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アイスクライミングは足で登ります

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 アイスクライミングに関わらず、一般的なクライミングは足を使って登ります。正確に表現すると、足の力を十分に発揮して登ることによって、より楽に安定したクライミングができます。アイスクライミングの手はアイスアックスを握っており、氷にしっかり決まると非常に持ちやすいのですが、これが落とし穴になります。必要以上にギュッと握った前腕はあっという間にパンプ(筋肉に乳酸がたまって非常に疲労する)し、登れなくなるでしょう。小さな歩幅で体重を上げて、バックステップやハイステップ、かき込みなどのムーブで、より腕の筋肉の消耗を押さえます。
 スタンスの置き場所として、氷の段差、凹んだところを選びましょう。足全体をべたっと置ける場合は、おいて問題ありません。クランポンの前爪で立つ場合は、しっかり目で確認して置きたい場所に2-3回氷を蹴り込み、安定したスタンスを作成します。登山靴はほぼ水平か、ちょっとかかとが上がる程度で我慢します。かかとを下げると前爪が外れ、かかとを上げすぎるとヒラメ筋が疲労します。
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より困難な氷に挑戦

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 アイスクライミングをちょっとかじると、より傾斜の強い氷瀑、今にも壊れそうな氷柱、トリッキーなムーブがあるハング(氷柱の連続体)、トラバース、岩壁と氷のミックスなどにもだんだんと興味が湧いてきます。
 自分たちでルートを設定し、限定的なムーブで登るというのもアイスクライミングの楽しみでしょう。
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最終的には、リードに挑戦してみましょう

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 元来、クライミングというのはリードで登って、そのルートを完登(完遂したという意味)できます。トップロープでのクライミングはあくまでリードクライミングのための練習という位置づけを覚えておきましょう。
 ただし、アイスクライミングのリードは非常に危険です。とても寒く、動きづらく、装備は重く、氷は壊れスタンスは崩壊し、アイススクリューの設置は難しく、氷が顔にあたって切り傷になります。メンタル(精神力)、フィジカル(体力・筋力)、テクニック(技術)がバランスよく必要とされ、それらを自分でコントロールしながらこなしていかなければなりません。
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アイスクライミングのイベントに参加してみましょう

まずは、机上講習や初級のイベントに参加してみましょう。

 雪山初心者や全く経験のない方、装備に不安がある方、寒がりの方、クライミングをしたことない方等は、机上講習や初級のイベントに参加してみましょう。机上講習では、必要な装備の説明、アクティビティの概要、インドアでのトレーニング方法を説明します。初級イベントでは、アイスクライミングの概要と危険性、装備の説明、トップロープでのクライミング方法、アイスアックスの振り方やクランポンの蹴り込み方、最も典型的なムーブ等を説明します。

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中級・上級の氷瀑・氷柱へ挑戦

 初級イベントを経験したら、中級・上級イベントへ挑戦してみましょう。中級イベントの氷瀑・氷柱は、傾斜が垂直に近くなり、ルートも長くなり、アプローチも遠くなります。しっかり準備して臨みましょう。上級イベントは、通常2-3シーズン経験したアイスクライマーの世界です。氷瀑の傾斜は垂直もしくはそれ以上、20~30mの傾斜が続き、1-2月の良く冷えた氷で硬く割れやすくシビアなコンディション、気温が低く身体的な強さが求められます。

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バリエーションルート

 バリエーションルートとは、登山道ではないルート全般のことをさします。氷、木、岩、雪などで支点を構築し、ロープ等で安全を確保しながら登ります。雪山登山とアイスクライミングの総合力が求められます。初心者の方はイベント申込前にご相談下さい。

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  • 2017.12.09
  • 14:50

安定した楽な歩き方 9つの基本

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ポイント① 歩幅を小さく

 登り、下りでは歩幅を小さくしましょう。大股でガシガシ登る人は、体力のある男性や一人で歩く経験の多い方に多いですね。大股で登ると筋力・体力の消耗が激しく、始めは勢いがあって良いのですが、だんだんペースが落ちてきて、疲労困憊することも少なくない。下りでも、小またで下りることによって、筋力・体力を温存できます。ただし、負担の少ない平坦な登山道やゆるやかに傾斜した登山道では、大股で歩いてもOK。

ポイント② 重心をぶらさない



ポイント③ しっかり体重移動

 体重移動が必要な場所は、登山道が滑りやすい場合です。例えば、雨で泥まじりの登り、雪渓の登下降、砂っぽいざれた下り等です。これ等の登山道はしっかり体重移動しないと、滑って転んだり、バランスを崩したりします。

■ 体重移動の方法
 登りでは、上げた足をかかとから地面に接地し、前足にしっかり体重をのせます。下の足は地面を蹴らずにゆっくり上げます。下の足を蹴るということは、上の足に体重がのせきらずに、下の足の力で上がろうとするため、下の足がズルっと滑ってしまうことがあります。この時、歩幅が大きいと太ももに負担がかかるので、歩幅を小さくしましょう。
 下りでは、

ポイント④ 目線を広く



ポイント⑤ まっすぐに立つ



ポイント⑥ ポールの活用



ポイント⑦ ペースを保つ



ポイント⑧ こまめな水分補給と栄養補給



ポイント⑨ ときどきリラックス




  • 2016.04.12
  • 19:21

クライミング上達の7つの基本

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 このページでは、クライミング上達の7つの基本や実際にその技術が定着しているかを確認できるチェック項目を説明します。この7つの基本は、フリークライミングにとどまらず、登山の縦走路の岩場やクサリ場を通過する際にも使う技術です。このページでは、クライミングの基本動作を確認する内容となっているので、各種ムーブ、ホールドの持ち方、リード技術、安全管理等の内容は記載していません。
 これらの基本ができていない場合は、各項目の練習方法を地道に繰り返すことによって、慣れ・理解が深まり・使いこなすことができるようになってきます。インドアクライミングジムでも、繰り返し練習することによって、自分の技術として定着し、より安定した登りができるでしょう。
 7つの項目ごとに確認ポイントや練習方法の例を紹介しているので、インドアクライミングジム等での練習の最後にルーチントレーニングとして取り入れてみてください。毎回10分でもトレーニングしてみれば、効果が表れるでしょう。

ポイント① つま先で立てる

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 クライミングは基本的に足で登ります。手の力だけで登っているととても疲れ、握る力が弱くなり岩を持ち続けることができなくなるためです。ルートの難易度が上がってくると、ホールドやスタンスは少なく、それらはどんどん小さくなっていきます。その小さいスタンスにつま先で立ってしっかり体重をのせることによって、腕の力を極力使わずに、足で体重を支え・足で登ることができるようになります。つま先は力を入れやすく、体重を一点にかけることによって、岩のフリクション(摩擦)を生かして、小さいスタンスにも立ち込めるようになります。
 登山靴の場合でも、つま先のクライミングゾーン(フリクションが良いラバー)がついているものも多く、この部分に体重をかけることによって安定して立てるようになります。
 また、つま先で立つことによって、身体の重心を左右に動かせるようになり、身体の動きの幅が大きくなります。これは、足の裏全体でベタッと置いてしまうとまっすぐ上には行けますが、左右に動きづらくなります(動かすとズリッと滑るような感覚で足が外れやすくなるため)。身体の動きの範囲を大きくすると、遠かったホールドが簡単に取れたり、壁全体を見渡すことによってホールドを見つけることができます。

■ポイント① 「つま先で立てる」の技術が定着しているかを確認する一覧
・大きい/小さいスタンスを問わず、つま先で立つことができる(インサイドでエッジングで立てる)。
・良い・大きいスタンスを目で見て、より大きな安定したスタンスを選択できる。
・大きさ、フリクションによってスメアリングとインサイドステップを使い分けられる。
・つま先に乗って重心を左右に動かすことができる。
・小さいスタンスにインサイドステップ/アウトサイドステップで立つことができる。
・腰を入れてジプス※に安定して立てる。(※スタンス専用の小さいホールド)

■ポイント① 「つま先で立てる」の練習方法
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 つま先で立つためには、自分の足にしっかりフィットしたクライミングシューズや登山靴が必要です。クライミングシューズは足の指先が曲がるぐらいに小さいサイズを選択します。登山靴はこれをはいて何時間も歩くので、ピッタリすぎると足の指先が痛くなることがあるので、登山の行程上で薄手と厚手の靴下をはき分けてフィット感をコントロールするのが一番簡単です。例えば、平坦な登山道では薄手の靴下を履いて、岩場を含む急な登り・下りでは厚手の靴下を履くなど。
 つま先の立ち方として、主に3種類あります。インサイドステップ、スメアリング、アウトサイドステップの3つです。クライミングシューズはこの3つを使い分けますが、登山靴ではインサイドステップとスメアリングを多用します。小さいスタンスに立ちこむ場合、体勢が重要になります。壁に近づきすぎず、腰を引きすぎず、まっすぐに立って、足に体重がしっかりかかるようにするのがポイントです。
 インサイドステップは、親指の母子球のあたりに力を入れてスタンスにのります。親指を曲げてスタンス(岩のでっぱりやへこみ)に巻き込むようにすると安定します。スタンスが小さくなれば、より先端の親指先に引っかける感じでのります。インドアクライミングジムで、ジプスで練習するのが最も効果的・効率的です。初めは、手のホールドは大きいモノを選択しますが、徐々に小さくしていき、より足の力で立つように練習します。スラブ壁でハンドホールドを無くして、ジプスを移動するのも良い練習です。
 スメアリングは、足の指先全体(親指~薬指くらいまで)をスタンスにベタッとつけて、岩とシューズの設置面積を多くすることによって摩擦力を得ます。かかとを下げることによって、岩とシューズがピッタリ設置するようになります。なるべく壁から離れた場所でスメアリングすることによって、壁と身体(重心)が離れ、動きの自由度が上がり安定します。初めは大きめのスタンスで練習しますが、徐々に小さく・傾斜も強くしていきます。スメアリングで立つときは、じゃっかん手から腰、足首までを緩やかな弓状の弧を描くと、より足に体重がかけられて安定します。この時、腹筋や背筋で身体を固めることによって、弓状の体勢が維持できます。
 アウトサイドステップは、薬指~小指に力を入れてのります。やはり力が弱いので、長い時間のることは少なく、登る動きの1つとして補助的に使うことが多いです。垂壁から薄かぶりのカウンターバランスやレイバック等でのオポジション系のムーブで使うことが多いですね。


ポイント② 腕を伸ばす

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 腕を曲げると力を入れやすいのですが、ずっと曲げていると筋肉に乳酸がたまりとても疲れます。ウンテイや鉄棒にぶら下がるときは腕を伸ばして手のひらだけ力を入れています。クライミングも同様の原理で、ホールドを持つ手は力を入れますが、腕全体は力を抜くことによって、疲れにくくなります。また、手を伸ばすことによって壁から身体が離れルート全体やホールド、スタンスの位置を確認しやすくなり、心理的にも余裕を持ったクライミングができるようになります。
 上に登るときは、腕を曲げて足を伸ばして力を入れます。上のホールドをつかんだら、なるべく腕を伸ばして、腰を壁に近づけてしっかり体重を足に乗せましょう。次のホールドを探したり、ルートを見たりする時もなるべく腕を伸ばすことによって疲労をたまりにくくして、楽に登れます。

■ポイント② 「腕を伸ばす」の技術が定着しているかを確認する一覧
・スタートからゴールまで、腕を伸ばすことを意識できている。(※全てのシチュエーションで腕を伸ばし続ける必要もなく、脇を締めて腕をロックすることによって力を使わない場合もあります)
・腕をのばした時に、無駄な力がかかっていない。(※ホールドを持ちすぎていない、ガバ/ジャグは指先で引っかける程度と考えておくと、力を抜きやすい)
・レストの時に腕を伸ばしている。(※腕を曲げてレストしていない)
・(垂壁~うすかぶりで)身体を壁から離して、視野を広げることができる。この時、腰は壁に近づけて、足に体重がかかるように意識している。

■ポイント② 「腕を伸ばす」練習方法
 腕を伸ばすためには、心理的に余裕があること、力を入れる部分と脱力する部分を使い分けてること、重心を落とすくせがついていること等が必要になります。
 落ちるのが怖くて心理的に余裕が無いと、肩や前腕に余計な力をかけて腕を曲げがちになります。力を入れる部分と脱力する部分が使い分けられると、指先や手のひらだけに力を入れて前腕や肩の力を抜いて、ホールドを保持できるようになります。初心者の場合、この力の加減が分からず、ホールドをぎゅっと握って、前腕も力を入れて、肩も固くなり、全体的に緊張してスムーズな動きができないことがあります。
 初心者の場合は、とにかく腕を伸ばす練習をすると身に付きます。無我夢中・自己流で登ってもある程度は登れますが、多かれ少なかれ壁にぶち当たります。正しい短距離走のフォームや正しい投球フォームがあるように、クライミングも正しい(楽に登るための)フォームがあります。その一つが腕を伸ばすことと理解して、練習すると良いでしょう。腕を伸ばすフォームが自分のムーブの引き出しとして、意識せずに使いこなせるようになるでしょう。
 最後に、腰を落として重心を下げて、足を曲げて立ち腕を伸ばして腕に余計な力をかけないようにすることもできます。この場合、体幹や足の力も必要になるので、常にこの体勢が正しいわけではありません。


ポイント③ 足の歩幅小さく

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 階段を登るときに1段飛ばしで登ると早く登れますが、早く登ると息が上がります。足の歩幅小さくというのは、それと原理と同じで楽に登るための必須技術です。なるべく小さいスタンスで足を上げたほうが、足の筋肉や心肺機能の負担が小さく楽に登れます。同じ原理でクライミングする時も、なるべく歩幅を小さく登ったほうが足の負担が小さく、バランスを崩しにくくなります。
 ただし、ルートの難易度が上がり、スタンスのホールドが少なく、足を高く上げて登る必要があるルートもあります。

■ポイント③ 「足の歩幅小さく」の技術が定着しているかを確認する一覧
・小さいステップで登っている。(※特に足自由課題)
・歩幅を小さくするために、足の置き換えができる。(※スタティック(静的)とダイナミック(動的))
・ホールド・スタンスが悪い場所で確実に体重移動ができる。(※下の足を蹴らずに、静かに上の足に乗り込むことができる)

■ポイント③ 「足の歩幅小さく」練習方法
 とにかく歩幅が小さくできる場所は小さくするように心がけるしかありません。力がある人ほどこの技術を重視せず、腕登りになってしまう場合が多く、グレードが上がった瞬間に足さばきができず登れない場合も多いです。
 練習方法として、簡単なルートで歩幅を小さくして登ることを反復練習します。また、普段は置かないような小さなスタンスに補助的に足を置いて、次の大きなスタンスを登るために使ってみましょう。地道な練習を反復練習し、身体に覚えさすことによって、難しいルートに取り組んだ際に引き出せる、自分の引き出しになっていきます。
 また、足の歩幅を小さくするには股関節の柔軟性も重要です。スタンスはあるが、足をその場所に持っていくのが難しい場合、上半身を左右に振ったり、腰や膝をやわらかく使うことによって、使うことができるようになっていきます。クライミング前にストレッチすることや、良いホールドを持って壁内で様々なスタンスを試して、ストレッチすることも有効です。


ポイント④ 平常心(リラックス)

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 クライミングするうえで最も重要な平常心。インドアのクライミングジムでは同じようなホールド、ムーブができるのだが、外岩でリードで登ると怖くてできない。こういうことが良くあります。クライミングは、精神力(メンタル)、技術(テクニック)、体力・筋力(フィジカル)の3つの力がバランスよく必要になります。精神力が無いと平常心が保てず、正常な判断ができない、焦って心拍数を高める、簡単なミスをする、とにかく腕力で登る等、安定して楽に登れなくなってしまいます。

■ポイント④ 「平常心(リラックス)」の技術が定着しているかを確認する一覧
・肩の力を抜いて、ルートを見ながら落ち着いて登ることができる。
・心拍数が上がらないようゆっくり登り、呼吸ができる。
・人の話・アドバイスを聞き、動きや持ち方を実行することができる。

■ポイント④ 「平常心(リラックス)」練習方法
 平常心を保つには経験が必要なのですが、クライミング初心者でもトレーニングは可能です。登る前に準備することによって解決できる場合もあります。トライするルートを他の人が登るのを見ることによって、ホールド・スタンスの位置、ムーブ、核心部分の認識を確認し、自分が登る姿をイメージします。これによって、ルート全体の流れが分かり心理的負担が軽減されます。こういったイメージトレーニングすることによって、イメージと実際の壁との差異が少なくなり、初めてのルートでもムーブを解決できるようになっていきます。このイメージで重要なことは、「なんとなく見る」ではなく「自分も実際登っている気持ちになって、手足をちょっと動かして見る」事です。


ポイント⑤ ルートを見る

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 ルートを見る技術には、2つの側面があります。1つ目は登る前にルートを見る、いわゆるオブザベーションです。2つ目は登っている最中に見ることです。
 オブザベーションすることによって、ルートの全体の長さ(高さ)、終了点の位置、ホールドの位置(チョーク跡)、核心(そのルートの中で一番難しいポイント)の場所等を確認します。また、リードの場合は、ランナー(ボルト)の位置や数、クリップできそうなポイント、ランナーに降られそうなポイント、絶対に落ちれないポイント等も確認します。
 登っている最中に見るというのは、レスト時に次の手順・足順を見たり、自分の持っているホールドや足を置いているスタンスを見てもっと安定した持ち方・置き方ができないかを確認することです。ホールドはチョーク跡が頼りになりますが、外岩の場合は試しに探った後もチョーク跡として残っていることも多く、そのホールドを自分が使うのか、使わないのかも判断する必要があります。

■ポイント⑤ 「ルートを見る」の技術が定着しているかを確認する一覧
・(オブザベーション)ルートの全体を見て、各ホールド左右のどちらかの手で持つかを判断できる。
・(オブザベーション)各ホールドの持ちやすさ、効き方向が分かる。
・(オブザベーション)ルートの核心部分が分かる。
・(オブザベーション)ルートの核心部分のホールディング、スタンス、ムーブが分かる。
・各ホールド、スタンス感を確認できる。(持ちなおす/足を置きなおす)
・レスト時に手順、足順を確認できる。
・登りながら、核心部分のムーブを想像できる。

■ポイント⑤ 「ルートを見る」の練習方法
 登る前にルートを見るオブザベーションの癖を付けましょう。簡単なルート、前にも登ったことのあるルート等でもオブザベーションの癖をつけると、ホールドの位置やムーブのイメージをつける練習になります。ルートの見方として、(1)ルート全体の流れを見る、(2)各ホールドの距離感・大きさ・持ちやすさを見る、(3)各スタンスの足の置きやすさ・足の入れ替え・フリクション(ざらざらしているか)を見る、(4)ルートの核心部を見る、ことです。
 (1)ルート全体の流れは、スタートの位置、キーホールドの位置、終了点の位置から、大まかに辿る場所を特定します。特にリードの場合、ロープの流れがスムーズになるようにランナー(クイックドロー)の長さを調整する必要も出てきます。
 (2)各ホールドの距離感・大きさ・持ちやすさは、可能な限り事前に情報を得るようにします。フラッシュの場合、登っている人の持ち方、バランスのかけ方からホールド感を把握したり、チョーク跡の大きさによって良く持たれているホールドなのかを確認したりします。
 (3)各スタンスの足の置きやすさ・足の入れ替え・フリクション(ざらざらしているか)は、外岩の場合なかなか下から見ててもわからない場合が多いです。登ってみると案外ベタッと置ける場所もあれば、つるっとしていておくのが怖いスタンスがあるのが普通です。重要なのは足や腰の位置です。そのホールドを持った時にどんな体勢(ムーブ)になっていれば楽か、次のホールドが楽に取れるかを考えます。手のホールドだけをおっていくと、足がおろそかになってしまいます。初心者は上の方だけを見て、手を先行させるムーブを考えがちですが、足のスタンスをしっかり確認しておきます。理想は、手のホールドの確認50%、足のスタンスの確認50%の割合で見れると、より足で登るクライミングが実現できていくでしょう。


ポイント⑥ 楽なバランスを保てる

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 楽なバランス?人間にとって最も楽な状態は寝ている時でしょう。その次は座っている時や立っている時かもしれません。ウンテイに腕を伸ばしてぶら下がっている時よりも、腕を曲げてぶら下がっている時のほうがキツそうです。
 クライミングは壁にへばりついている状態で、登る、休むを繰り返し行う運動です。腕の筋力より足の筋力が強いので、腕でぶら下がっているより足で立っているほうが楽です。また、腹筋や背筋の体幹の力があれば、足にしっかり体重をかけることができます。
 クライミングするうえで、この楽なバランス、楽に登れるバランスを「ムーブ」と言います。クライミングの基本である三点支持があります。人間の手足四点のうち、必ず三点を安定した場所に置いて、一点を動かす登り方を三点支持と言います。この三点支持も楽に登れるバランスの1つ、ムーブの1つです。

■ポイント⑥ 「楽なバランスを保てる」の技術が定着しているかを確認する一覧
・スラブ~垂壁では三点支持で登ることができる。
・足を上げる時に重心から大きく外れてあげることが少ない。
・両手・両足を広げて、力が入りにくい体勢にならない。
・ホールドのない壁に手や足を押しつけて、バランスを取ることができる。
・身体を上げる時や体勢を保持する時に、プッシュを効果的に使うことができる。
・凹角ルートでステミング、バックステップ等で楽な体勢を取れる。
・(うすかぶりで)足を引っかけて手前に引いて、体幹でバランスを取ることができる。
・(うすかぶりで)腰を入れて、しっかり足に体重を乗せることができる。

■ポイント⑥ 「楽なバランスを保てる」の練習方法
 自分が登れる限界グレードよりもちょっと簡単なルートを何度も登ることが良い練習になります。オンサイト(初見)で登る時は、アドレナリンが出たり、モチベーションが高いため、案外するっと登れることがあり、別の日に登ると雑な登りになったり、力を使い果たしてしまったりすることも多々あります。何度も登り、最も楽な登り方を自分なりに定着させ、ムーブに関しての理解を深めます。足の置く場所を数cm変えてみたり、ホールドの持つ手を逆にしてみたり、正対もしくは2点支持で試したりして、2-3回登ってみると良いでしょう。こういった積み重ねが、外岩でも自分の引き出しとして生きてきます。たまたま出たムーブなのか、意識して動いたムーブなのか、全く意味合いが違います。クライミングに関する天性のセンスがない多くのクライマーは、こういった地道なトレーニングによって、より難しいルートが登れるようになっていくのが普通です。


ポイント⑦ レスト&チョークアップ

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 クライミング上達の基本の最後は、レストとチョークアップ。長いルートや困難なルートを登る際に必要な技術です。ルートの核心の前にレスト、チョークアップし、核心をこえる準備をします。
 レストは数秒~数分までそのルートのレストポイントの状況によります。ストレニュアスなルートでの唯一かかりが良いカチ、ガバホールド、バンドのようなしっかりしたスタンス、手を離してもとどまれるテラス等、腕の力を抜いて血流を良くすることがレストの目的です。また、レスト時に次のホールド、スタンスの確認やチョークアップして手汗で滑らないように準備します。難しいルートほど、レストがルート攻略のカギになることも良くあります。

■ポイント⑦ 「レスト&チョークアップ」の技術が定着しているかを確認する一覧
・レストの体勢を取ることができる。(腕を伸ばす、腰を入れる、体幹で保持する)
・レスト時に片手を降ろして、シェイキングできる。
・チョークアップできる。
・チョークアップしながら、ルートファインディング、レストできる。

■ポイント⑦ 「レスト&チョークアップ」の練習方法
 ガバでレスト&チョークアップを必ずする練習法が効果的です。疲れていなくても、とにかくガバでレストする練習で、意識と動きを習慣化させます。


インドアクライミング講習会

 LOCでは、クライミング上達の7つの基本に加え、装備、ロープワーク、リード講習、スタイル、ルール、ルート攻略等の講習会を開催しています。

  • 2017.12.14
  • 22:25

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はじめまして、ラブジアースアウトドアクラブ(LOC)代表の岡村です。

登山における事故ゼロを目指しています。山登りに関する、計画、装備、体力、技術、知識等のスタンダードを皆様に提供し、自立して楽しめるようにサポートさせて頂きます。

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